「解約ボタンを押したとき、正直怖かった」
山田あかりさん(仮名)は、そう言って少し笑った。東京・中目黒で脱毛サロンを経営して8年。開業当初からホットペッパービューティーに掲載し続け、それが「当たり前の集客」だと思っていた。月18万円の掲載費は、売上の約15%を占めていた。
解約を決めたのは2024年の初夏だった。8年間払い続けて、気づいてしまったことがあったからだ。
山田さんのサロンは4席。スタッフは山田さん含めて3名。コロナ禍を乗り越え、近隣に競合が増えても、なんとか黒字を維持してきた。しかし毎年、同じ悩みが繰り返されていた。
「閑散期——特に1月2月は予約が半分以下になる。でもホットペッパーの費用は変わらない。売上が50万円のときも、120万円のときも、18万円は出ていく。それが8年間続いた」。
📊 山田さんのサロンの集客実態(2023年時点)
リピート率28%という数字が特に山田さんを悩ませていた。脱毛は複数回通う必要があるサービスだ。初回来店して満足してもらえれば、通い続けてもらえるはず——そう思っていたが、7割以上が1〜2回で来なくなっていた。
「ホットペッパーで来る人は、複数のサロンをはしごしている人が多い。クーポン目的で来て、次はもっと安いところに行く。悪い人じゃないけど、うちのサロンを選んでくれたわけじゃない。そこに8年間、年間200万円以上かけていた」
— 山田あかりさん(仮名)、東京・中目黒 脱毛サロン オーナー転機は知人の紹介だった。同じく美容系の事業をしている知人が「資料請求で来た人はリピート率が全然違う」と話していた。
最初はピンとこなかった。「資料請求って、なんの資料?」と思ったという。しかし話を聞くうちに理解した。「コースの詳細・料金・施術内容を調べて、複数サロンを比較した上で、このサロンの資料を取り寄せた人」が来るということだ。
クーポンで来た人と何が違うか。クーポンで来た人は「安かったから来た」。資料請求で来た人は「このサロンに頼みたいと思って来た」。この違いが、リピート率に直結する。
* * *
弊社との商談を経て、山田さんは1ヶ月悩んだ。ホットペッパーを完全に解約するのではなく、まず掲載費を下げながら成果報酬型を試すという選択もあった。しかし山田さんは「半端にやっても意味がない」と思っていた。
「ホットペッパーを続けながら別の媒体も試すというのは、2つの集客方法を同時に動かすということ。どちらの効果かわからなくなる。8年間ずっとホットペッパーに依存してきた。一度きれいに切って試したかった」
— 山田さん解約日の前夜、山田さんはスタッフ全員に話をした。「来月から集客の方法を変える。最初の1〜2ヶ月は予約が減るかもしれない。でも長期的にはこっちの方がいいと思っている」。スタッフは全員「やってみましょう」と言ってくれた。
成果報酬型の掲載を始めてから2週間で最初の資料請求が届いた。都内在住の30代女性で、「全身脱毛を始めたいが、どこのサロンが良いか3社を比較している」という状況だった。
山田さんが電話すると、1回で繋がった。会話の中で、その女性が「中目黒で通いやすい」「口コミの評判が良かった」という理由でうちを選んでいることがわかった。クーポン目的ではなかった。
初回来店から3ヶ月後、その女性は全身脱毛コースを継続中だ。「この人は最後まで通ってくれる気がする」と山田さんは言った。
📊 解約から3ヶ月後の比較
件数は減った。しかしコース継続率が28%から61%に跳ね上がった。来た人の半数以上がコースを続けてくれるようになった。「件数は減ったのに、売上はそんなに変わらない。むしろ手残りが増えた」と山田さんは言う。
「気づいたのは、集客の本質は『数』じゃなくて『誰が来るか』だということ。100人来て10人続けるより、30人来て18人続ける方が、サロンにとっても、お客様にとっても良い。ホットペッパーを解約した日が、うちのサロンが変わった日だった」
— 山田さん、解約から3ヶ月後📝 取材後記
山田さんへのフォローは6ヶ月後にも行った。コース継続率は65%まで上昇し、ホットペッパー時代には経験したことがなかった「口コミ・紹介からの新規来店」が月3〜5件生まれるようになったという。「選んで来てくれた人は、友達にも紹介してくれる」という言葉が印象的だった。集客の入口を変えることが、サロンの文化を変えた——そういう話だった。
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