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不動産 集客ルポ

ポータルを捨てた不動産営業マンの話
——月30件の反響が「ゼロ」になった日から

📅 2026年4月13日⏱ 読了目安:約12分✍ まるなげ資料請求 編集部

「反響が来なくなったんじゃなくて、来ても意味がなくなったんです」
木村誠さん(仮名)がそう言ったのは、2024年の春だった。埼玉県で不動産仲介会社を経営して12年。地元に根を張り、SUUMO・HOME'Sへの掲載を続けてきた。月に25〜30件の反響があった時期もあった。しかし今は、同じ金額を払って同じ件数が来ても、成約につながらない。

「質が変わった」と木村さんは言う。「以前は1件の反響が来たら、丁寧に対応すれば5件に2件は成約した。今は10件来ても1件つながるかどうか。残り9件は、複数社に一括で問い合わせしていて、どこかで決まってしまう。あるいは最初から来る気がない」。

ポータル依存が生み出した「追客地獄」

木村さんの会社は4名体制だった。木村さん自身と、専任スタッフが3名。ポータルから来た反響を追客する作業が、4名の業務時間の大半を占めていた。

反響が来たら即電話。繋がらなければ2時間後にまた電話。それでも繋がらなければLINEで連絡。週に1回リマインド——このサイクルを月30件分繰り返す。繋がる率は低く、繋がっても「もう他社で決めました」という返答が多い。

「うちは一括査定サイトにも登録していた。来るんですよ、反響は。でもそれはうちだけじゃなくて、同じタイミングで5社6社に一括で問い合わせが行っている。早い者勝ちになる。朝一で電話しても『もう決めました』と言われる。速さで勝てなければ意味がない競争に参加していた」

— 木村誠さん(仮名)、埼玉県内 不動産仲介会社 代表

月のポータル掲載費は合計28万円だった。一括査定サービスの登録費も含めると35万円前後になる。年間で420万円。この金額に見合う成約が取れているかという問いに、木村さんは「正直わからない」と答えた。計算したことがなかった。

計算してみた夜

弊社に問い合わせてきた前の週、木村さんは初めてコスト計算をしたという。過去1年分の契約データとポータル費用を並べて、チラシの裏に書き出した。

📊 木村さんが計算した「ポータルの実態」(過去12ヶ月)

年間ポータル・一括査定費用約420万円
年間反響件数約320件
CPL(1件あたり)約13,000円
うち商談化した件数約38件
うち成約件数22件
CPA(成約1件あたり)約19万円
追客にかけたスタッフ時間(推計)月100〜120時間

成約1件あたり19万円。木村さんの会社の1件あたり仲介手数料は平均38万円。ポータルコストだけで利益の半分が消えていく計算だった。さらに追客に費やしていた月100時間以上のスタッフ時間を人件費換算すると、実態はさらに悪化する。

「この計算をしたとき、正直ぞっとした。12年間ポータルに依存してきたけど、1回も収支を計算したことがなかった。なんとなく来るから、なんとなく払い続けてきた。それが実態だった」

— 木村さん

* * *

「ポータルを捨てる」ことへの恐怖

弊社との最初の商談で、木村さんが最も強く言ったのは「ポータルは怖くてやめられない」という言葉だった。

12年間、ポータルが集客の柱だった。それを削減するということは、反響がゼロになるリスクを取るということだ。従業員が4名いる。彼らの給与は毎月発生する。反響がゼロになってしまえば、会社が止まる。

担当者はこう提案した。「ポータルをやめる必要はありません。まず成果報酬型を1チャネル追加して、2つを並走させてください。ポータル経由のリードと、資料請求経由のリードを3ヶ月比較してみましょう」。

木村さんは「それならリスクがない」と感じた。最悪ゼロ円で終わる選択肢だから、試すことへの躊躇がなくなった。

最初の資料請求が届いた日

掲載内容は「埼玉県南部エリアの中古マンション・一戸建て仲介」に絞った。掲載開始から11日後、最初の資料請求が届いた。

川口市在住の40代夫婦からだった。「家族が増えたので3LDKに引っ越したい。今の家を売って住み替えたい」という状況が、資料請求時のメッセージに書かれていた。

木村さんがすぐに電話した。1回で繋がった。

「ポータルの反響と全然違った。まず1回で繋がる。そして話を聞くと、ちゃんと検討している。『今すぐじゃないけど来年春には動きたい』というタイムラインもあった。ポータルから来る人は、比較のためだけに来ているケースが多くて、温度が読めない。この人は最初から温かかった」

— 木村さん、掲載開始から2週間後

その夫婦は、2ヶ月後に成約した。売却と購入の両方を木村さんの会社に依頼し、合計の仲介手数料は76万円になった。この1件だけで、成果報酬型に支払ったコストの数ヶ月分が回収できた計算だった。

3ヶ月後——木村さんが下した結論

並走から3ヶ月後、木村さんは比較データをまとめた。

📊 3ヶ月間の比較:ポータル vs 成果報酬型

ポータル:月の反響件数(平均)26件
ポータル:商談化率約10%(2〜3件/月)
ポータル:月のコスト35万円
ポータル:CPA(成約1件あたり)約19万円
成果報酬型:月のリード件数(平均)8件
成果報酬型:商談化率約38%(3件/月)
成果報酬型:月のコスト約2.4万円(3,000円×8件)
成果報酬型:CPA(成約1件あたり)約8,000円

月の商談化件数はどちらも2〜3件で同水準だった。しかしコストは35万円 vs 2.4万円という差になった。CPAは19万円 vs 8,000円——約24倍の差だ。

さらに見えてきた違いがあった。追客にかかる時間だ。ポータルの26件は、そのほとんどに電話・LINE・リマインドが必要だった。成果報酬型の8件は、資料請求時にメッセージが届いているため、最初の連絡が取りやすく、無駄な追客がほとんどなかった。

「ポータルは反響は多いが追客に時間がかかる。成果報酬型は件数は少ないが、来た人の対応に集中できる。うちみたいに小さい会社は、100件に電話するより、10件をちゃんと対応する方が絶対に向いている」

— 木村さん、3ヶ月後のフォローアップにて

木村さんが出した結論は、「ポータルを捨てる」ことではなかった。ポータルの掲載費を35万円から15万円に削減し、主力媒体を1本に絞った上で、成果報酬型を恒久的な補完チャネルとして残すという判断だった。

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📝 取材後記

このインタビューから半年後に連絡をとると、木村さんは「ポータル費用を年間200万円削減できた。その分をスタッフの給与改善に充てた」と話してくれた。反響の件数は減ったが、成約件数はむしろ増えた。「追客に追われなくなったことで、来た人をちゃんと案内できるようになった」という言葉が印象的だった。不動産営業は「数」ではなく「質」の勝負だということを、コスト計算が証明した話だった。

✅ この記事から得られる示唆

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